世界レベルを目指して
今度は俺がみんなを突き動かしたいと思っている。
俺はプロ化して、世界と戦えるまでに目まぐるしく成長してきた日本サッカーを実際に肌で体験してきた世代なんだよね。Jリーグで一生懸命プレーし、代表で世界やワールドカップも垣間見ることができた。自分で言うのは恥ずかしいけど、絶頂の時にオランダの名門アヤックス(アヤックス・アムステルダム/エールディヴィジ)入りを本気で狙って練習に参加した時期があるんだ。「最終目標は世界」だったし、チャレンジしないと何も始まらないからね。
オランダ:アヤックスでの衝撃
でも、日の丸を背負ってきた俺がアヤックスに行って一番ビックリさせられたのは、プレーの質の高さや洗練された戦術でもなんでもないんだ。初めてアヤックスの練習場に足を踏み入れた時の衝撃は今でも忘れる事は出来ない。まるで緑の絨毯が敷き詰められたような天然芝のグランドが6、7面ドーンとあって、その隣には公式戦をする6万人収容のアムステルダムアリーナが建っている。練習用のグランドには6歳用、10歳用・・・18歳用という風に並べてあって、プロを夢見る子どもたちがしっかり練習をして、最後は憧れのスタジアムまで到達するイメージで配置してあるんだ。そして、それを沢山の市民たちが温かく見守っている。こういう環境があるから人口1,600万の小さな国でも、あんなに強くて上手くて闘う代表チームができてくるんじゃないかと痛感したんだ。
サッカー人生の意味
プロスポーツはチームが強いとかカッコいいとかが大事なことだと思うけど、やっぱりハード面の充実もすごく大切だと思う。レッズ(浦和レッズ/J1リーグ)も駒場から埼玉スタジアムに移ってもの凄く観客数が増えたし、元レッズ社長で前日本サッカー協会会長の犬飼さん(犬飼基昭氏)が市民もスポーツにもっと親しめるような施設をと「レッズランド」を造ったよね。オランダでも感じたけど環境がサッカーというスポーツを文化にしていくんだよ。
俺はいまガイナーレ鳥取でプレーしている。Jリーグ、香港リーグ、日本代表を合わせると過去通算450試合くらい出場して選手人生を全うさせてもらってるけど、この鳥取をスタート地点に日本のサッカー文化の発展に役立つことができないか、俺のやってきたサッカー人生に意味を見つけたいと思っているんだ。
育て、鍛え、楽しみ、誇る。それができる環境整備を!
ガイナーレ鳥取は二度の大きな挫折を経て、今度こそJの扉を開いた。でもJ昇格を果たした今、スタジアム規格の問題でガイナーレを育んできた米子でのホームゲームが開催できないんだ。せっかくここまで力を合わせて頑張って大舞台に立つまで漕ぎ着けたのに、ここでサッカー文化を閉ざしてしまうのは子供たちからサッカーの夢を奪ってしまうのと同じなんだ。
今回の「YAJINスタジアム」プロジェクトは、ガイナーレのスタジアム問題がきっかけだけど、これは日本サッカー界の未来を担う気がしている。子どもたちが夢を持ちながらのびのびと身体を動かすことができて、中高校生たちはガンガン鍛えられる。隣のスタジアムでは、Jリーグの試合を見ることもできる。地元の人たちもいろいろな形でスポーツに関わることができる、そんな壮大なプロジェクトなんだ。俺がオランダで見て感動した環境をこの日本で実現したい、日本一小さな鳥取県で日本一大きなことを実現してやろう!ってことなんだよね。それはそんなに難しいことじゃない。ガイナーレ鳥取を応援してくれる人、サッカーやスポーツを愛する人たち、俺の趣旨に賛同してくれるみんなが、少しだけ本気を出せばきっとできると思うし、地方クラブの新しい在り方を提言することで日本のサッカー界に恩返しができると思っている。
でてこい!野人2世
ここで揉まれて育った選手たちが「岡野さん、もう僕たちに任せといてよ」って言ってくれて、野人を継ぐ選手が続々登場してくれたら最高だし、こんな施設が全国にいくつもできたら本当に素晴らしいと思う。
俺はこれまでサッカーを信じてきた。だからそんな夢を持ってプレーする多くの人たちの背中をちょっと押すことができれば幸せなんだ。
岡野雅行 / Masayuki OKANO
- 生年月日
- 1972.7.25
- 出身地
- 神奈川県
- 経歴
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- 松江日本大学高校(現立正大学淞南高校:島根県)
- 日本大学
- 浦和レッズ(1994年~2001年8月)
- ヴィッセル神戸(2001年9月~2003年)
- 浦和レッズ(2004年~2008年)
- TSWペガサス(香港)(2009年2月~6月)
- ガイナーレ鳥取(2009年8月~2013年)
- 日本代表歴
- 1995年~1999年 25試合2得点